アレッポの「本当の住民」は、追い出されていなかった?

さて、アレッポの退避の件についての報道は、非常に奇怪なことになっています。
Global Times誌で見た記事は、AFPの転載だったので、西側のメディアの報道ということです。 しかし、それよりも遅く、ロシア側のSputnikのほうでは、次々にこの件についての記事が出されていて、「なんか違うこと」を言っている笑。
退去させられたのは、「もともとの市民」ではなくて、反政府軍とその「家族」であると。
女や子供がいたのは、それらの家族だと。
2012年以来、アレッポは反政府軍に支配されていた…んですが、それは、アレッポの「外」から入ってきた人たちで、さらにその「軍」は、「家族」をぞろぞろ連れて、「移住」をしてきていたと言うんですね。
すごい話だ。
これは、つまりは「反政府軍という名目の植民」だったのではないのか。
そういえば…織田信長が天下統一をやっていたころには、兵農分離をやって、そして、切り取った先の土地に、それらの家族を呼び寄せて、植民をさせていったんですね。
だから、秀吉一家なんかは、転々と、あちこちに引っ越すということばかりをしていた。
そういう感覚…。
とにかく、Sputnik誌(ロシア側つまり、ロシアとイランとシリアの代弁ということになる)によると、以前からのアレッポ市民は、残っていて、「アレッポが解放されたこと」を、喜んでいるというんです。
…え。
それだと、西側のメディアのとは、だいぶ違うような気がするが…。
'We Waited for This Day for Five Years': Aleppo Residents Celebrate Liberation
反政府軍が出て行って喜んでいる「もともとのアレッポ市民たちの様子」だという↓
aleppo4
アレッポ市民のうち、キリスト教徒たちがクリスマスを祝う↓。武装勢力がいる間は、クリスマスは許されなかった(イスラム教では、キリストを救世主とは認めないので、クリスマスはない)

トルコがカギを握っていた

すると、アサドは、「本当に、アレッポを奪回した」ということなのか。
Sputnikの報道によると、今回の件は、ロシア・イラン・トルコ同盟の合意によるものだと言うんですね。
How Russia-Turkey-Iran Alliance 'Already Bearing Fruit' in Syria
そして、特にトルコの決断がなければ、アレッポ奪還(つまり反政府軍の退去)は、成立していなかっただろうと、言っている。

トルコを持ち上げるイランの専門家

In an interview with Sputnik Persian, independent Iranian expert in regional and global politics Farzad Ramazani Bonesh also underscored the role of the Russian-Iranian-Turkish cooperation in the war on terror.

イランの専門家(お抱えでなくて独立としている)Farzad Ramazani Boneshは、Sputnik誌のインタビューで、ロシア・イラン・トルコの団結がテロとの戦いに重要な役割を果たしたとした。

“This alliance is already bearing fruit as evident from the results of the recent meeting by the three countries’ foreign ministers in Moscow. I would also like to praise the role played by Kazakhstan and other countries, which acted as go-betweens in the talks between the Syrian government and the opposition,” Farzad Ramazani Bonesh said. He mentioned the vicious campaign of slander unleashed by pro-Western, Turkish and pro-Arab media about the humanitarian situation in Aleppo and the distorted picture they painted about the role played by Iran, Russia and the Assad government in the liberation of Syria’s “northern capital.” “The militant gangs that besieged Aleppo and fought the advancing government forces were jihadist radicals and terrorists all, but this fact seems to have been completely lost on mainstream media,” he continued.

「この同盟は、最近の、モスクワでの外相三者会談の結果という形で、すでに効果が出ている。さらに私は、シリア政府と反政府軍の間の橋渡しをしてくれた、カザフスタンやほかの国の役割も評価したい」
Farzad Ramazani Boneshは、西側や、トルコやプロ=アラブのメディアから出された悪意ある悪口キャンペーンにも触れた。シリア北の都市(アレッポを指している)の解放にあたって、アレッポの人道状況や、イランや、ロシアやアサド政府の役割について捏造された写真などについて。
「アレッポを占領して、政府軍と戦っていた武装ギャングたちは、すべて、過激なジハディストだった、しかしこの事実は、メディアのメインストリームでは、まったく報道されなかった」

Farzad Ramazani Bonesh added that with Aleppo now liberated the alliance of Russia, Iran and Turkey will be highly effective given Ankara’s sway over the moderate opposition groups in northern Syria and great deal of Russian and Iranian influence on Damascus. The close interaction by these three key regional players holds the key to ending the conflict in Syria and stabilizing the situation in the war-torn Arab country.

Farzad Ramazani Boneshは、アレッポが解放されたことによって、ロシアとイランとトルコのタッグはもっと強力なものになるだろうとした。トルコが北シリアの穏健な反政府軍を説得し、ロシアとイランのディールがシリア政府に大いに影響を与えたように。
地域の3つのキープレイヤーたちの密接な関係が、シリアの紛争を終わらせ、戦争に引き裂かれたアラブの国(シリアを指す)の安定のカギとなる。

“If the Turkish authorities end their support for the so-called ‘moderate fighters’ in the north, close their border and stem the tide of new jihadist recruits heading to Syria, this would be a big first step towards a lasting peace and stability in Syria,” he emphasized. “For their part, Iran and Russia could act as mediators and guarantors of a peaceful dialogue between the opposition and President Bashar Assad,” Farzad Ramazani Bonesh added.

「もしも、トルコ当局が、北の『穏健派と呼ばれる民兵たち』への支援をやめれば、国境を閉ざして、シリアにリクルートに入ってくるジハディストの流れを食い止めれば、これはシリアの永続的な平和への最初の大きな一歩になる」

“For their part, Iran and Russia could act as mediators and guarantors of a peaceful dialogue between the opposition and President Bashar Assad,” Farzad Ramazani Bonesh added.

イランとロシアの役割は、調停者として、反政府派とアサド大統領の間に平和的な対話を保証することだ」と、Farzad Ramazani Boneshは述べた。
だから、今回の件というのは、トルコが、重要な決断をして、それでやっとのことで成り立ったというものらしい。
なので、アサドは「トルコを説得してくれたロシアに大感謝」ということらしい。
Assad Thanks Putin for Russia's Efforts to Liberate Aleppo
トルコの決断とは。
それは、アサド退陣を求め、これまで支援してきたシリア反政府軍への支援を打ち切るという決断だったらしい。
…トルコが支援をしていたのは、たぶん、自由シリア軍。
しかし、シリア国内には、ほかにも反政府勢力が乱立し、およそまとまりというものが、なく、それは、シリアに限らず、イスラムの傭兵勢力の特徴でもありますが、「中央集権化しにくい」わけです。まとまらない。
「部族長全員が社長状態」ですから。ピラミッド型の組織というものには、なかなかならなくて、命令系統がバラバラである。それは、アフガニスタンでも同じだった。
トルコは、シリアのクルド兵を嫌っていますから、これ以上のクルド勢力の拡大を避けたかったということ、さらに、ロシアに折れた、「決断」というのは、大使暗殺よりも前になされていたんですが、それまでも、クーデター以来、ロシアにはいろいろと世話になっていて、特に、決め手になったのは、たぶん、10月のエネルギー協定(ガスパイプラインの供給)ではないでしょうか。
とにかく、トルコがどの範囲の反政府軍に支援をしていたのかも、定かではなく、クルド兵以外だったには間違いないでしょうが、クルド兵への支援をしなくても、結果的には、ほかの反政府軍に与えた支援が、クルド兵を利するということにも、なっていたに違いない。
そして、トルコは切り捨てを決断、そしたら、ロシア大使が殺されたと。わかりやすいな。

報道されない「バスの行き先」

不思議なのは、西側メディアは、アレッポ退去の件を「非人道的だ」という意味合いでのみ、報道していることです。
迎えのバスを寒いところで待たされていたとか、何も食べさせてもらっていなかったとか、ほとんど、そういうことしか報道していない。
…というかですよ、そのバスは、誰が出して、どこへ連れて行ったの。
どこを見ても、そういうことが書いていないんですよ。
20万だか、30万だかの武装兵と、その家族の女子供を含めた人たち今回出て行ったのは、国連によると「約35000人」なので(Over 35,000 People Left Eastern Aleppo - UN Syria Envoy's Adviser)、やはり、もともとの人口と比較すると、「一部」でしょう。
とにかくその人たちを、バスで、どこへ運んだのか、西側メディアのどこにも、さらにSputnikにも書いてない。
…変な話だ笑。

ひたすらトルコを称えるという理由は

これは、「トルコの決断」を、イランが称えて、やたらに持ち上げているというところからすれば、トルコに運んだというふうに見るのが、妥当ではないのでしょうか。
シリア国内の、ほかの反政府勢力の陣地に行ったというふうにも、見ることはできますが、そして、そのほうが有り得るような感じもしますが、アサドが「これで、あとはISISを倒すだけだ」と言っているらしいので、今回アレッポから「反政府軍を除去した」ことによって、国内の反政府勢力というのは、もう全部「テロリスト」というふうに見なすということではないのか。
トルコに運んだのではないかというのは、そもそもトルコには、大量の移民の流入に備えた施設があるはずで、受け入れ体制ができているはずだからです。
EUからお金をもらって、大量の移民を受け入れるという約束をしているんですから、そういう施設があるんです。
だったら、今回、「謎のバス」が行った先というのは、トルコの難民収容所というのが、最も考えられるのではないのか。
どっかに運んで、ほとんど全員を殺すつもりだったのでなければ、です。
もしもそういうことであったなら、国連が同意したとか、監視団が入ったということも、ちょっと考えにくいし、「どこへ運んだのか」ということが、明らかにされていないのは、それが、「運ばれた本人たち」の意に反しているからで、または、「知らされていないから」ではないでしょうか。
トルコの難民収容所、そこにいるのではないか。