さて、日本ではまったく注目されていないけれど、実はものすごい重大なニュースというのが、いくつかあるんですが、フィリピンのアメリカ大使館外での「反基地闘争」なんかも、そうなんで、これも、日本語で書かなければならないと思っているんですが、私は、一人でやっているし、体がひとつしかないので、そんなにいっぺんにいろいろできない。
なので、取りあえず、「世界的に重大度が高いほう」から、行きます。

トルコがシリアのクルド兵を大規模空爆

トルコが、アメリカが支援するシリアのクルド兵を空爆(ロイターより)

aleppo
The jets targeted positions of the Kurdish-led Syrian Democratic Forces (SDF) in three villages, northeast of the city of Aleppo, that the SDF had captured from Islamic State, the Syrian Observatory for Human Rights said late on Wednesday.

シリア人権監視団体の話によると、トルコの戦闘機は、アレッポの東北部にある3つの村における、クルド兵が主導するシリア民主軍(SDF)を攻撃した。当該村は、SDFがISISから奪還した場所。

The Turkish military confirmed its warplanes had carried out 26 strikes on areas recently taken by the Kurdish YPG militia, the strongest force in the SDF, and that it had killed between 160 and 200 combatants.

トルコ軍は、SDFのうちの主力であるKurdish YPG兵が最近占領した当該地域に対し、26発の空爆を行ったことを認め、160人から200人の戦闘員を殺害したとした。
トルコが、シリアのクルド兵を大規模空爆した、これは、すごいことなんです。
どうして、すごいのか。
ピンと来ない人は、取りあえず、トルコやロシア関係の過去記事を、ざっと見てもらいたいんですが。

プーチン訪土の直後

ともかく、トルコというのは、プーチンが訪問をしたばかりで、ロシアからガスや原発を買うということで、「アメリカ離れ」を進めているんじゃないか、そういうふうに見られていた時期だったんです。
その直後に、シリアのクルド兵を空爆、160人から200人のクルド兵を殺したという。
…これは、普通に考えたら、「はっきりとアメリカに逆らった」ということに、なる。
この前、シリア側からISISを追い上げてきて、トルコ側に追い詰めて来たクルド兵を、トルコが、ISISもろとも攻撃したというのがありました(過去記事:トルコが北シリアのISISとクルド兵を砲撃で、アメリカ困惑)。
このときに、すでに「アメリカは困惑」だったわけなんですが、今回は、もっとはっきりしてしまった。
「トルコが、アメリカの言うことを聞かなくなった」ということが、です。
ともかく、「クルド兵」とトルコの関係というのは、以下のように、とんでもなくややこしい。
クルド兵とトルコの関係 そして、前から言っているように、トルコの大統領のエルドガンという人も、一筋縄ではいかない、評価が難しい人なんです。
「いい人」か「悪い人か」とか、そういうものさしで、簡単に分けられるような人ではない。
トルコ大統領のエルドガン
最近では、トルコの憲法改正をやって、大統領への権限をもっと強化しようとしているそうで、独裁化がどんどん進むのではないかという懸念もあります。 民主主義なのか独裁なのか?トルコは憲法改正を思案中、エルドガンがさらなる権力を求める(Sputnik誌より)

↓こんなのもあるみたい。すごいな。ハチマキなんだろうか。
erdogantie
コントではなく、ガチでこういうの↑があるというところが、お国柄なんでしょうか。
……。
世界は広いな。
まー同じ独裁者でも、これが、安倍普三の顔だったとしたら、誰も、ハチマキとかタスキとして着用したいとは、思わないだろうな…。

空爆の理由は

ともかく、今回の空爆の理由として考えられるのは、
  1. 領土の問題(自分たちの国を持たないクルド人が、トルコの一部を切り取ろうとしていて、それをアメリカも支持していて、それが例のクーデターと関係があるとエルドガンが思っていそうだという問題)
  2. 1とも関係があるが、トルコ国内でテロを起こしているクルド労働者党と、シリアのクルド兵が、共闘していそうな問題
  3. トルコは、ロシア・シリア・イランの「中東から米軍を追い出してやる作戦」に参加したのかもしれない
注目すべきは、特に3で、これだとすると、やはり、プーチンの訪土と関係があるはずですね。
ロシア側は、アメリカが支援している反政府軍の中に、テロリストが混じっていると主張していて、反政府軍が「まともな民兵だ」というふうには、見ていない。
さらに、3だとすれば、トルコの米軍基地は、追い出すという前提になります。
そうなると…フィリピンの米軍基地は、もうすぐ追い出されることが確実ですが、トルコも、本格的に「アメリカとの軍事同盟解消」に、向かうということなのか。
どうなのか。
ただし、確かエルドガンは、対アサドでは問題があって、アサドがシリアを治め続けることには、賛成していないそうなんですが、そこらへんは、アサド政権支持のプーチンと、話がついたのかどうかは、不明ですね。
だからここにも、トルコがこの先「プーチンを裏切る可能性」というものは、残っている。
残っているけど、ガスのパイプラインとかもあるから、どっちかと言えば、考えにくい。

いっぽうでは、インドが軍備増強

東ユーラシア大陸からの「米軍基地の追い出し」については、インドが問題だと、前にも述べた(過去記事:インドはどこへ行くのか~アメリカ一強主義のキープレーヤー~)んですが、ここで、最近、面白い動きがあったんですね。
インドでは最近、BRICSの会議があったんですが、BRICSについてぜんぜん知らないという人は、ちょっとなんか、自分でググってもらいたいと思います。
とにかく、プーチンはインドに来て、モディとも会っているんですが、それでなんと、インドは、ロシアから、軍備をしこたま買い入れることを決めたというんです。
ええー。
インドがロシアから対空ミサイルシステムを購入(Asia Times誌より)
BRICS
さらに、プーチンは、インドのKudankulamというところの、ロシア製の原発の開通式(というのかな)にも出席したという。
ロシア製の原発と言ったら、トルコでも導入が決まったばかりでしたね。
Beside the purchase of Russia’s S-400 Triumf air defence systems, the two countries will collaborate in building four advanced frigate vessels and set up a joint production facility for Kamov military helicopters.

ロシアのS-400対空ミサイル購入のほかに、4隻のフリゲート艦、カモフ製の軍事ヘリコプターの共同開発工場でのコラボも予定されている。
そうなると、それは、普通に考えれば、パキスタンと中国にとっては、「脅威」ということになるんですが、どうもこれは、ロシアと中国の間で、話がついているぽい。
中国は、インドとの領土問題があるとか、インドはアメリカの同盟国だとか、ほかにも、もともといろいろあって、インドとはあんまり仲がいいとは言えないわけですが、今のところ、インドがロシアからしこたま武器を買い入れて、軍備増強をすることを、警戒していないぽい。
それは、なぜ。
警戒していないとしたら、それは、ロシアとの話がついているからとしか、思えないんですが。
あとは、インドの軍備増強を警戒するのは、もちろん、パキスタンでしょうが、そこらへんは、どうなるのか、まだよくわからない。
とにかく、トイレの数も足りないようなインドが、大枚をはたいて軍備増強、アホらしいなあと思うのが普通ですが、もしもこれが、プーチンの東ユーラシア版NATO計画(過去記事:プーチンは何をしたいのか~ロシアが軍事演習を強化~)の「一環」だとしたら。
インドから米軍を追い払う理由があるとしたら、まずは、「もう自力で防衛ができるから、要りません」と、宣言をする必要がある。
それかなあと。
それと歩調を合わせるように、「トルコがクルド兵を大規模空爆」なんですね。

シリアやトルコやイエメンやインドで起こっていることは、全部つながっている

そして、最近、アメリカが、イエメンの内戦に、本格的に軍事介入しようとしていること(過去記事:自衛隊はイエメンに派遣されて死ぬ~米軍がイエメン内戦への介入を始めた~)、これなんかは、シリアを追い出されそうになってきたから、次の「稼ぎ場所」が必要だからです。
だから、やっぱり、全体の背後にいるのは、ロシア、そして中国も、目立たないように、協力をして、ロシアに同調している、なんとなく、そういう感じがするんですね。
基本的には、最近あちこちで起こっているものごとは、「アメリカ一強主義」を終わらせて、「アメリカだけがトクをする世界」から、マルチポーラーワールドに移行するための、計画の一部とか、その余波。