トルコが「アサド政府を滅ぼしてやる」?

すごいニュースと言えばすごいニュースなんですが、「諸事情」で微妙になっている件笑。
erdogan
なんと、あのトルコのエルドガンが、シリアに宣戦布告をした…というんですが、ほとんど誰も騒いでいない。
私が見たのは、アメリカの、かなりブッ飛んでいる右翼が、エルドガンは怖い、危ないと、なんか騒いでいたくらいかな。

ちなみに、このブログでは、日本のマスコミ表記の「エルドアン」ではなく、エルドガンを使用しています。
原語での発音を聞いても、よくわからないし、gが入っているので、そうしました。

エルドガンが発狂?

シリアに宣戦布告とは、どういうことかというと…
Erdogan Says Turkey's Op in Syria Aimed to 'Put an End to the Rule' of Assad(Sputnik誌より)
"They say that 600,000 people have been killed in Syria, but I think about a million have died. Where is the UN, what is it doing? We were tolerating it for a long time, but finally were forced to enter Syria jointly with the Free Syrian Army," Erdogan said at a symposium in Istanbul.

「シリアでは60万人が殺されたと言う、しかし私は、100万人くらいだと思う。
国連はどこにいるんだ、何をやっているんだ?
われわれは、長いこと大目に見てきたが、ついにシリアの解放軍に参加することにした」と、エルドガンは、イスタンブールのシンポジウムで言ったという。

"What for? We do not lay claims to the Syrian lands… We are there to restore justice and put an end to the rule of cruel tyrant Assad," he said.

「どうしてかって?われわれは、シリアの領土が欲しいわけじゃない…われわれは、正義を回復して、専制君主のアサド支配を終わらせたいんだ」と彼は言った。

この前、領空侵犯をして空爆もしているけど、それは、反政府軍

ええと、この前、トルコはシリア領内に侵入して、クルド兵を空爆したんです(過去記事:)。
そのときには、攻撃したのはクルド兵ですから、反政府軍なんで、反アサドです。
解放軍に参加するどころか、攻撃して、殺しているんだけど…。
ということは、アサドの味方をしたということになる笑。
トルコがシリアのクルド兵を攻撃したのは、自分のところに入って来させないためであって、それをされると、領土のないクルド人に、領土を切り取られてしまうからです。
エルドガンは、前々から、それを警戒している。
しかし、結果的には、アサドの味方をしたことになる…。
なので私は、この空爆は、領空侵犯にもなるし、地上から迎撃される可能性があるんだから、アサドに連絡をしてあったに違いないと思っていました。
さらに、アサド側からも、事後の抗議とかは、なかったと思う。
反政府軍を殺してくれたんだから、感謝している…というのがアサドの気持ちのはず。
もちろん、エルドガンは、前々から、アサドは退陣して欲しいとか言っていましたが、そしてそこが、ロシア+シリア+イラン同盟の仲間になれない理由のひとつでもあるんですが、前から言っているように、現段階では、ロシアに逆らうという選択肢は、ないはずなんですね(過去記事:)。
…ならば、どうしてこんなことを言っているのか。

ほぼスルーされている…

ちなみに、このエルドガンの発狂については
  1. ロシアのSputnik誌は取り上げているが、政府筋が打消しにやっきだという報道
  2. 中国のGlobal Times誌は、今のところスルー
  3. 西側大メディアは無視
…という状況なんです。
ということは。
クーデター直後にも、こういうことはあった…。
つまり、エルドガンが、暴走発言をして、直後に首相が打ち消すということが、私の知る限りでも、何度もあった。
ドゥテルテなんかも、そうですね。
だから、「またそれ」なんでしょう。
エルドガンが、実際に、シリアに軍を進めて、シリア政府軍を攻撃しない限りは、これは宣戦布告ではない。
「いつもの暴走」。

シリア政府は…

ちなみに、シリア政府側の反応は…
Erdogan's Remark About Toppling Assad Prompts Syrian, Russian Reaction (Sputnik誌より)
The Syrian Foreign Ministry said that the Turkish president's statements confirm Damascus' assertion of Turkish aggression in Syria.

"Erdogan's statements about the goals of Turkish aggression in Syria put an end to his lies and clearly revealed that Turkish aggression on Syrian territory is nothing more than a result of ambitions and illusions," the ministry said in a statement obtained by RIA Novosti.

シリア外務相は、トルコ大統領の声明は、シリア政府が思っていたとおり、シリアへのトルコの侵略だったと述べた。

「シリア侵略の最終目標についてのエルドガンの声明は、彼のウソを暴き出し、トルコのシリア侵略は、野望と妄想でしかないことを明らかにした」と、ノーボスチ誌に語った。
まあ、ロシアがいるから、有り得ないと思っているけれど、侵略してやると言われたからには、一応は抗議しておくと。

ロシア政府は…

いっぽう、ロシア外務省側の反応は、一番理解のできるものでした。
"No, principled and hypothetical speculations are inappropriate here," Peskov said when asked if Erdogan's statements could affect bilateral relations.

エルドガンの声明は、ロシア・トルコ関係に影響を及ぼすのかと聞かれ、ロシア報道官は「いや、仮定の話はすべきでないし、適切でない」と言った。

"The statement was new. So before making any judgments, we hope this position will be explained," he said, adding that the statement was very serious.

「この声明は出たばかりだ。だから、いろいろ判断を下す前に、われわれは、説明をしてほしいと思っている」この声明は深刻なものだがと言いつつ、彼は述べた。
Peskov said Erdogan’s announcement on Assad, which had not been voiced in phone talks with Russian President Vladimir Putin, ran counter to Russia's understanding of the situation.

ペスコフ報道官は、エルドガンのアサドについての声明は、プーチン大統領との電話では話し合われていないとして、ロシアの立場を述べた。

He added that Russia is the only country whose forces are in Syria legally.

ロシアは、シリアに合法的に軍隊を展開している唯一の外国だと述べた。
トルコとロシアは、いくつもの外交協定を結んでいるので、シリアを侵略するということは、それに反することになる。
さらに、プーチンにも聞いてみないと、プーチンとの話がどうなっているのかわからない。
なので、今はコメントを控える。
こういう感じなんです。
だから…総合すると、エルドガンのいつもの暴走と見るのが、妥当。

当のトルコ政府は…

火消しに走るトルコ政府。
"The presidential statement was announced yesterday, but it should not be perceived literally. I hope that the misunderstanding [with Russia] in this connection will be promptly overcome," the source said, adding that only Turkey's top leadership could provide official comments on Erdogan's announcement.

「昨日出された大統領の声明は、文字どおりに受け取るべきではない。
私は、(ロシアの)誤解が解けるといいと思っている」と政府筋は述べ、トルコの上層部だけがエルドガンの声明についての公式コメントを出すことができると言った。
…そら、一番に気にするのは、怒ったプーチンに、お仕置きをされてしまうことですから、政府側は、焦っている。

EUへの意趣返しであろう

それでは、どうして暴走したんでしょうか。
いつも暴走気味の人とはいえ、これはちょっと、しすぎ…。
それは、私が思うに、
「EUへの意趣返し・嫌がらせ」
ですね。
トルコは、NATO加盟国なのに、EUには入れてもらえずに、加盟申請をして、死刑を廃止しても、ずっと待たされた挙句、この前、「永遠に凍結」と言われてしまった(過去記事:)。
なので、それへの意趣返しです。
どうしてこれが、嫌がらせの効果があるのか?
それは、NATOが軍事同盟だからです。
トルコが戦争をすると、それは、ほかのNATO加盟国にも関係してくる。
軍事同盟というのは、そういうものだから、お高く留まってトルコに意地悪をしている(というふうにエルドガンには見えている)EU諸国が、トルコが始めた戦争に協力をしなくてはいけなくなる。
さらに、アメリカも、関係がある。
だから、EUの国は、困るんですよね笑。
余計なことに巻き込まれてしまう。
EUの加盟国というのは、基本的には、トルコなんか、どうでもいいとか、軍事基地さえ使わせてくれればそれでいいとか、移民さえ引き受けてくれればそれいいと思って、バカにしているんですよね。
そして、「人権ガー」と言って、「EU加盟凍結決議」なんかをしてしまったので、エルドガンは、黙ってはいられなかったんです。
なんかガツンと言ってやらないと、プライドが。
この前、「移民を送り付けるぞ」と言って脅したけれども、あんまり効果がなかったとか、それでも気がおさまらなくて、こういうことになった。
さらに、7月のクーデター未遂以来、疑心暗鬼になって、ちょっとノイローゼ気味だということは、言えるのではないかと思う。
と、私は見ているんですが。

そびえるプライド、淋しいお財布

トルコというのは、難しいんです。
お金はあんまりなくても、プライドはものすごく高いから、トルコの人というのは、絶対にバカにしてはいけないんですね(過去記事:)。
「お金はあんまりなくても、プライドがものすごく高い」という国は、ほかにもありますが、例えばフィリピン、ベトナムがそう。
トルコというのは、もともとはオスマン帝国ですし、東西の文化がぶつかりあう場所ですから、もっとややこしい。
プライドがものすごく高いということは、わかってあげないといけなくて、だから、そういうふうに接すれば、大丈夫なんです。
なので、礼儀を重視し、相手への敬意を欠かさない中国とは、うまく行っている。
トルコと中国というのは、互いに重厚で、歴史があって、プライドが高いというので、「合う」わけですね。
そして、中国の人は、賢いですから、「お金ができても、お金のない相手に対して威張らない」ということで、だからトルコなんかとも、うまく行く。

悲しいイラスト

Global Times誌では、こんな悲しいイラストまで…
Global Times誌は、中国政府の新聞ですから、あんまりトルコをバカにしてはいけないということが、わかっているので、こういうふうに、トルコが、EUに意地悪をされ、仲間外れにされているというふうな目線から、こういうふうに描いているんですね。

安倍普三とは決定的に違う

ヨーロッパの人は、エルドガンが大嫌いなんです。
ものすごく評判が悪いし、難民をダシにしてお金を取られたということを、みんなが知っている。
彼がEUの言うことを聞かないから、自分たちにとって都合が悪いから、ものすごく嫌われている。
いっぽう、安倍普三は、その存在すら、認識されていません。
安倍普三は、西洋人には逆らわないし、進んで言いなりになって、貢ぎ物を差し出すから、無視しても問題はない、どうでもいいと思われているからです。
自国民にとっては、どっちの「独裁者」のほうが、ありがたいんでしょうかね。
私は、エルドガンにはわりと好意的なのは、どうしてかというと、この人は、確かに独裁者でしょうが、売国奴だとは思わないからです。
この人は、「トルコとトルコ国民」というものを、守ろうとして、そのためにあらゆることをやっているというふうに見える。
彼の行動を見ると、この人は、どこかほかの国の利益のために、自国民を犠牲にしようというふうには、思っていないと、そう見ています。
誰かや、どこか力のある相手に対してでも、「トルコのため」なら立ち向かうと、アメリカでもそう、クーデターを起こされたと思ったら、米軍基地の電源を切ったり、ギュレンを引き渡せと要求しましたね。
EUに対しても、そう。
この人がもしも、買収されて、EUの言いなりになる人だったらば、いくらでも中東難民を受け入れていたでしょうが、それをしていたら、困ったのは、トルコ国民です。
そういうことをしていたら、EUからのお金ももらえなかったし、ビザなし通行もできていなかった。
さらに、サウジなんかは、難民を受け入れていないのに、どうして自分のところばっかりというのは、ありますよね。
クルド人に対してもそうで、平和なトルコ国民になっているクルド人は、自分が守ると、だから、ISISの結婚式テロで、クルド人を殺されたら、怒って、すぐに現地に行きました。
しかし、国内でテロをしているクルド労働者党は、テロをするし、分離主義者だから、敵だと。
さらに、それとの関係があり、いずれはトルコの領土を切り取って、自分たちの国を作ろうと思っているシリアのクルド兵も「トルコの敵」だと思っている。
ロシアは、クーデターのときに情報をくれて、自分を逃がしてくれたし(たぶんですが)、プーチンは信用できるから、協力してもいいと思っている。
しかし、ロシア+シリア+イラン同盟に入らないとか、NATOをまだ追い出さないのは、いろいろと計算があるから。
だから、この人は、安倍普三とは根本的に違うと思うんですね。
安倍の場合には、自国民はどうでもいいから、アメリカの国益のために、ひたすら貢ぐと。
ただ、エルドガンが思うような「トルコ」というものに「あてはまる人」であれば、いいわけですが、そこから外れると、排除や弾圧の対象になってくる。
今のところ、生粋のトルコ人でなくても、そして、たぶんイスラム教徒ではなくても、「トルコ国民」であって、そしてエルドガンを支持する人であれば、「トルコ」のうちに入るのではないかという感じではあります。
もっと情勢が落ち着いて、テロリストがいなくなれば、もっと穏便な人がリーダーになってもいいんでしょうが、今のような状況では、これくらいにアクの強い人でなければ、トルコという国は、難民であふれ、領土を求めるクルド人やらイスラエルなどに食い荒らされて、解体されてしまう可能性は、かなり高い。
そういうふうになりたくないと思うトルコ国民は、エルドガンを支持しているんじゃないんでしょうか。
まあ、私がトルコ国民だったとしたら、今は、彼を支持するかな。
とにかく、テロなり、外国の侵略や、領土切り取りや分離、そういう危険があるうちは、あんまりぼやぼやしている人には、任せられない。
欧米からはバカにされながらも、そびえるプライドと、淋しいお財布で、せいいっぱい、自分たちの利益のためにやってくれていると、彼を支持しているトルコ国民というのは、そういうふうに思っているんじゃないんでしょうか。

ロシアに怒られて終わる可能性が大

まあ、今回の暴走は、シリアとロシア以外のほとんどの国が、スルーをしているようなので、エルドガンが、実際にシリア侵略をしない限りは、プーチンに怒られて、「いやちょっと…EUが頭に来たから」とか言って、これでおさまる…ぽい。と思うんだけど。